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湾岸をひた走る僕らパラノイア スピカ クローネ 脈絡もなく chloe(吉野リリカ)の創作いろいろ。
一昨日の動物
001


わたしは誰かのために
洗われるからだを持つ

ひたいに緑のマジックで
数字を書きこまれ
ころされるための順番を待っていた
にんげんは言葉を持たない
ただ迷いのないうでがわたしにのしかかり
すばやく脚を折り、痙攣が待たれる
水を掃く音、尻を冷やすコンクリ、
霧のなかで
空高く衣類だけが積み上げられていたことも
覚えている


(眩しい塔をみたのさ
光は波のように寄せ
あの塔がなんども現れてくる

そこは
様々な体温が甘く蒸れ
いつかだれかの暗い舌に溶けたが
指先を切ったあなたの顔のまえで
血のように出会う
 
posted by クロエ | 18:49 | 詩クロエ | comments(0) | - |
帰途
VFSH0029 


コーヒーに砂糖はいれない 
もうこれ以上なにもあまくしたくないから

目覚めたら窓の外 
静かに装ったしろい人々

「よそ行き」という言葉はこわい

どこかへむりやりつれて行かれそうで

傘をもって 
それでも外へ出かけた

雨が降ると 片腕を空へ持ち上げて傘をさすなんて恥ずかしい

たぶん一生 
慣れることなんかできない


ここ数日 ずっと帰り道のような気がしてならない

コーヒーに砂糖は入れない
もうこれ以上 あまくしたくないから







posted by クロエ | 20:37 | 詩クロエ | comments(0) | - |
雨音
14






雨が降り始めたようだ
葉を叩く水の音がする



私はやわらかい灰色の下にいて 長い一日の物語を書こうとしている 静かな夜明けに始まり 永遠の中に浮かぶ 或る一日 そこで私自身が生きられるような



山脈にかかる雲がほどける 裁断から巨大な手で垂らされる水のヴェール それは花嫁のうなじを包む白い光だ 地上をはるか離れたものが 無垢の光を放つのはなぜだろう 人はただ小さな傘をさして 無垢が街に降る音を聴きに行く 雨粒は地上に触れる直前に 翼をたたみ そっと爪を揃える



光がこの地球のものとなる その時間を 私は見ていたい 降りて来た言葉の爪先が私に触れる



その時から
永遠の一日は始まる






 
posted by クロエ | 18:09 | 詩クロエ | comments(0) | - |
檸檬
s07s





木の階段をのぼるとき
何人もの靴の先で削られた
へこみに誘われる

古い建物の
ガラス戸のむこう
卍のポーズでねじれたままの
女の人がいる

数日前 店先で見たレモンの鉢植えは
細い枝に大きく実ったレモンがなっていたが
体の重いひとが
体を窮屈そうにしているのは
なんだか

可憐


ヨガ教室の
ヨガするひとを通りすぎて
部屋に辿りつくまでに
埋めた種にふた葉が生えてくる
私は
質問した事はないが
疑問がぎざぎざした歯のように湧く


性愛に関した二、三のこと
滅びについてもひとつ


初潮を迎えた十二の年から
月とは関わり深かったが
じきに天にのぼり

かぐやのように
十二以前の細い細い身体になるのであろう



posted by クロエ | 20:07 | 詩クロエ | comments(0) | - |
星屑
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窓の外にある無数の怖いものを「星屑」と書く敗北に依存するのが私たちの未来で、私たちの身体で、大気圏の外には言葉はないのに、無いものが美しくあったように、悲しくあったように、「星屑」は書かれて、何処から来た、何処へ落ちる、という大切な「科学」はだから、「大気圏」の外に出て、そこには言葉はなく、ない言葉を含む宇宙には実景がなく、実景のない宇宙には人は存在せず、ただ括弧があり、それが自分の身体だと思い、それに接続する「他者」、という言葉は「星屑」の乗法によって精確を覚えず、ほんとうは「星屑」など見ていないのに、見ていないのに「星屑」と書いて、見ていないのに書いて、見ていないものを悲しくなったと書いて、悲しくあること、本当に悲しいはずだった私たちの大気圏はどこにもないのに、どこにもないのに、そのないものから疎外された身体があるだけなのに、自分と、他の、身体があるだけなのに、愛することが出来ない「星屑」の間隔はそれだけで十分なのに、その「愛することの出来なさ」は何処から来た、何処へ落ちる、ということを問うことなく、これが問題であり距離であり孤独であると「星屑」なのに、そこからいなくなるものなのに、目の前でいつも静止しているみたいに書いて、ホームランドの遠景のように書いて、それだけ長くここにいたら、間隔だって摂理に動くのに、普通のこととして、書いて、嘘を書いて、動くものを動くものとして書いて、ここにあることは動くのに、人の魂は動くのに、動くことは特別なことではないのに、人はいなくなるのに、消えるのに、ずっといないことを約束するのに、約束するのに、いないことを約束するのに、最後まで、聞いていますか、大好きなひと。 
posted by クロエ | 17:04 | 散文クロエ | comments(0) | - |
赤い実
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キンモクセイの精気でいらいらさせられる夜
あなたの澄み切った心がくたくたに疲れていくのを見る
喋る石にかどわかされないように
二回以上はこたえない
月のしなびた血を頭からかぶる
プラスチックの夜の虹があなたの家から生えだし
きらきらと流動物は葉脈を伝い落ちてくる
神様の引越しの手伝いをした夢見がちな気分をぶち壊しに
やってくる
足だけの生き物
生白い肌にそれぞれの色の糸をまきつけている
半月とよばれるそのなかのひとりと
恋に落ちる(ふりをする)
灯火のような赤い実を割ると
ふたりのじかんがあふれだしたこと
きれいに光る糸をわけあって
二の腕に縫いつけたこと

風がふけば
壊れてしまうような硝子で囲われた、世界の
 
posted by クロエ | 20:29 | 詩クロエ | comments(0) | - |
来るべきしろいノートのための素描
i-48

なにかに、遅れること。遅れることの、ゆるやかさにおいて。
あなたが、透明な、塵ののうつわであることについて。
その、微かさと、やわらかさにおいて。
とるに足りない、にごり水のような、ものとして、木片として。
どこまでも続く、きれぎれの、折線として。
掬いとる、ときの、いっしゅんの、てのひらの形をこえて、
理由のない、方角から、
なだれてくる、波動の、いちぶとして。
かならず消えゆくもの、として。
ふたたび現れるもの、として。
こころは、川のようなもの。だから。こころは、まぎれもなく、ふるえる肉の、かたむきだから。
かろうじてきょうを接ぎたそうとする、ものだから。
どこかへ。どこまでも。とぎれながら、行く(逝く、行く)だろう。
わたしたち。いつも素描のような、
ひとつの、未完成の、
反転する、声。
その草むらの、むこう、へ。あの、むこうまで。
ただ、そのままで。
星形に、きっと祝福されて……


19XX年、X月X日、X時X分、XX病院のくらい一室で、
流れ星はなかったが、きみは、たぶん早まりもせず、
遅れもせず、古びた時計がちょうど指ししめすその
時刻に、しずかな角度で震えながら、この地上にむけて
ななめから産声をあげた。
後年、君の母はよく語ったものだろう。
「ほんとうに難産だったのよ」



 
posted by クロエ | 08:53 | 詩クロエ | comments(0) | - |
手裏剣
080






葬った
はずの
感情を
恋だとあなたが教えてくれました
こんな夏の終わりの夕暮れにひとり
寂れた公園のブランコを軋ます時

鳴き声を言葉に翻訳したら
悲しいよ、の大合唱だった
蝉時雨に髪を濡らしながら
あなたにただただ逢いたい
小さめの耳と控えめな笑顔
怒ったときにふとすぼめる唇
あなたの静寂を思い出すと

カラカラと何かが回る音がして
いつの間にか心に差された風車が
あなたからの風に踊っていたから
秋には
お祭が
来ます



パパが
死ぬ時
くれた
目には見えない魔法手裏剣二十枚
諸悪を許すまじという遺言どおり
アタシは打った理不尽な女番長に

セクハラ課長や嫌味な同僚
二股かけられた最低男に
びしびしと手裏剣を打った
不思議だが当たると誰もが
ホッとした様な顔に変わる
夏の縁日で風車に涼を知る
そんな風に悪は滅びるのか

残すところ魔法手裏剣はあと一枚
ある瞬間の為に大事にとってある
いつうかあたしの心の鬼が暴れ出す
その時
自分を
打つよ




 
posted by クロエ | 21:03 | 詩クロエ | comments(0) | - |
無色透明ベビー 2
体力の、或いは精神力の限界に来ていた。私の頭は半鐘のように鳴り響き、目眩がした。無理だ。今日は無理。だって病院がすぐそこにまであるのに、どんなに歩いても一向にその距離が縮まないのだ。これはかなり重傷だ、よく頑張った、と自分を褒め称えつつ、一方でそれと同じくらい、いや、それ以上の存在感を背中から発している、スポーツバッグの中の赤ん坊。ああ、私はこんな所で路頭に迷っている。ひどく孤独だ。踵を返して自宅へ戻るにももう体力的に無理だった。

ちょうどそこへ一台のタクシーが向かってきた。渡りに船。私はタクシーを呼び止め帰宅することにした。ぴっかぴか、を通り越してべっかべかに磨き上げられたタクシーの運ちゃんは、自宅までの距離が短いことから、露骨にイヤな顔をしたが、こちとら具合が悪いんでぃ、と心の中で呟いた。タクシーのカーステレオからは、「太陽がいっぱい」のサントラが流れていた。そういえば、このシートはなんてふかふかなのだろう。私はバッグを傍らに置くと、沈み込むようにシートにもたれた。運ちゃんは、このまま何処か知らないお花畑的な場所に連れて行ってくれる……。ほっとしたのか強烈な眠気が襲ってきた。

センチメンタルなトランペットの曲は、何かが少しズレていたが、それが一層私を此処ではない何処か安楽な場所へ連れて行ってくれる、根拠のない自信が湧いてきた。

暫くして、窓の外に目をやると、そこは本当に知らない場所だった。お花畑ではなかったものの、五月のような木々の葉の充実。春のひかりはやわらかで優しく、私は目を疑ったが、明らかに此処は自分のうち方面ではない。「あの、ここはどこですか?私は緑区といったんですが」運ちゃんは真っ直ぐ前を向いて微動だにしないまま「あなたは旅をしたいのでしょう?」と言った。そうだ、私は旅の途中だったんだ。すっかり忘れていた。この、赤ん坊のせいで。

(続く) 
posted by クロエ | 21:37 | 小説クロエ | comments(0) | - |


i-27s



正に
判決は
下された
心の法廷で
もうずいぶん前かららしい
僕が抱いていたのは君の
愛などではなく孤独だった
傍聴席から殺した笑いが漏れ
幸せを信じていた僕は思い出す
閉じた目を
開けたとき
だまし絵の
荒野に迷う
あの妙な
絶望に
似た





生まれた時にはもう罠が
進むべき道のあちこちに
魅惑の殿堂として配置されていて
歓びののあとズタズタにされる例の悲哀が
母の乳房に甘えながら既に湧いていたのだ
欲望と共に
人生がある
ならばまた
その痛みも
果てしない
罠という
文字に
似た






 
posted by クロエ | 09:32 | 詩クロエ | comments(0) | - |